今回私は
「このままでは故郷に戻れず、鍛錬も積めなくなるかもしれない」
というようなことを言った上で、彼が絶対服従するであろう言葉――『リア』のことを持ち出した。

「リアが待っているんでしょ。
故郷がどうなってもいいの?」
と彼に問うと、途端に『そのこと』を思い出したのか、青ざめた顔であっさりと私の申し入れを受け取ったのだ。

これも以前、ディーンがアレックスを説き伏せた時に使った技だった。

妹のリアは、アレックスが黙って故郷を離れたことに、相当怒っているらしい。

そこでディーンが
「このままではリアが何をしでかすか分からない。
今帰らなければもう二度と、故郷の敷居を跨げなくなるぞ」
というような言葉でアレックスを脅し……いや、懐柔したのである。

だから今回、それを少し真似してみたのだ。

エドのほうは直ぐに
「パーティリーダーである〜アレックスさんの意見に従います〜」
と、いつもの軽い調子(ノリ)で言ってきたので、そちらの攻略は簡単だった。

とはいえ彼の中ではいつの間にか、アレックスが『リーダー』ということになっているらしいのだが。

「それよりエリス、さっきの話を詳しく聞きたいのだが」

「ああ…うん、いいわよ」

ルティナが何を訊きたがっているのかを察した私は、彼女の元へ近付いていった。