あれを取りに行っている時間は、もうない。
私は目の前で開いたままの両掌を、呆然と見詰めていた。
「……リス……」
耳に当たる吐息。
肘に当たる感触で、私は我に返る。
そうだ。
まだやれる。
まだ希望はあるはずだ。
私は右手を強く握り締めると、肘を後ろへゆっくりと引いていった。
しかし。
背中から伝わってくる重圧感。
既に気力を失いそうになっていた私は、それを支えきれず、前のめりで倒れ込む。
私は体勢を立て直すかのように、慌てて彼の手を引っ掴んでいた。
そうだ。
ここで何もせずに、終わらせるわけにはいかない。
私は夢中で、その手を強く握った。