黒い風のようなものが吹き荒れていた。
中心にある種が高温だというから、近付くことさえできないほどの熱さなのかと思っていた。
しかし実際に入ってみると、生ぬるい風が吹いているだけである。
想像していたような、強烈な臭いも感じられない。
とはいえ、気持ちの悪いことに変わりはなかった。
生暖かい上に粘り気のある風圧が、直に肌へ当たっている。
毛穴という毛穴にぺたぺたと貼りついては、隙あらば侵入しようとしているかのようだ。
ゼリューの術によって瘴気を防いでいるはずだが、全身に鳥肌が立つくらいの気持ちの悪さである。
本当にこの術は瘴気のみを遮断するだけで、その感覚までを防ぐことはできないらしい。
だが例え気持ちが悪くても、それは我慢をすれば良いだけだ。近付くことが可能ならば、何も問題はない。
『瘴霊の種』の鈍い輝きは、入り口付近からほど近い場所に見えていた。
距離はそれほど遠くない。
あれを破壊するだけだ。



