ゼロクエスト ~第2部 異なる者

魔物は、倒れて動かないルティナの頭上付近に佇んでいた。その鋭爪の届きそうな範囲内には、私も居る。

敵がこちらを振り向けば、完全に目が合ってしまうだろう。

ここはやはり今からでも「死んだふり」をするべきなのか。

しかし魔物のほうはこちらの心配をよそに、向こう側へと頭を動かしていた。

これほど近い場所に居るというのに、こちらへは一向に見向きもしない。

そういえば先程から、何処か様子も変だ。

低い唸り声を上げてヨダレを垂れ流し、遠くを見ているかのような、完全にイッた目をしている。状態が普通ではない。

それに歩いている足取りも不安定だ。

これではまるで――。



魔物が向かっていた先には、瘴霊の種があった。

そうだ。そこへ向かっている。

敵は何の躊躇いもせずに、そのまま黒い渦へと消えていった。

程なくすると、大きな爆発音が聞こえてくる。

魔物の入った場所からは強風が排出され、複数の何かも外へ投げ出されていた。



それは赤い液体だった。

中に紛れていたのは、ミミズの千切れたようなもの。或いは白い固形物。

それらが瀑布の如く、地面へ叩き付けるかのように投げられていた。

同時に放たれる臭気のせいで、私の胃の内容物も逆流しそうになってきた。

だが大量の唾液を一度に飲み込んで、何とか堪える。