「何故だ! 貴様っ!!」



再度鳴り響く轟音。

それに紛れて発せられた声で、蹲っていた私は反射的に顔を上げた。

そこに飛び込んできた光景は、佇んでいるゼリューに攻撃を仕掛けている、ルティナの姿だった。

だが彼は顔色一つ変えぬまま、その場で微動だにしない。

事実、ルティナは力任せに何度も拳をぶつけていた。

が、それはゼリューに一度も届いてはいなかった。

彼女もまた先程の私と同様に、激痛と痺れを味わっているはずだ。

その上所々破れた服の下からは、赤いものも滲み出しているのが見えた。

弾かれては立ち上がっている。それでもなお激しく、立ち向かっているのだ。





「おおっ、そこに見えるのはエリスではないか」

「ん?」

緊迫した空気の中で、のんびりとした場違いな声が聞こえてきた。

ルティナの背後に首を伸ばせば、アレックスとエドの姿が見える。

だが直ぐに、エドの様子がおかしいことに気が付いた。

アレックスに引き摺られるようにして、ぐったりと肩に凭れかかっているのだ。

「アレックス! エド!」

私は二人の元へ急いで駆けつけていた。



だが何故だろう。



二人の姿を見た途端、胸につかえていた大きな何かが崩れるように、怒濤の如く喉元にまで押し上がってくる。

私は駆け寄りながら、少し湿ってきた目を拭った。