「妾(わらわ)の術を受けてもなお、意識が保てるとはな。そこは褒めてやるぞ」

相手のほうが、血のように艶やかな唇を先に開いた。同時に双眸にある真紅の瞳が、一瞬の煌めきを放ったようにも見えた。

「やはり特殊な身体を持つ『呪われたモノ』だけのことはある」

彼女はその言葉を聞いた途端、無意識で身体を震わせていた。しかし視線だけは微動だにせず、直ぐに口端を上げる。

「……成る程な。貴様はあたしのことを知っていて、そのために襲ってきたというわけか」

敵は彼女の殺気に気付いていないはずはなかったが、その表情は全く変わらず、薄笑いを浮かべたままだった。

「自惚れるでない。妾は貴様になど興味はないぞ。
……それよりもどうだ、取引をせぬか?」

「取引……だと?」

その言葉を聞いた途端、彼女は右眉を僅かに動かした。