先へは行きたくない。

けれど、腕に付けられた紋様の効力を知りたい。





私がその場でしばらく悩んでいると。

「……ハァ……ハァ……」

不意に背後から、獣の荒い息遣いのようなものが聞こえてきた。

それが耳に入った瞬間、私の身体は無意識に動いていた。そして前方にある木陰へと滑り込んだ。

ここは「モンスター・ミスト」――つまり、魔物の創り出した結界の中だ。獣など居るはずがない。

居るとすれば恐らく、結界を解いたであろうルティナたち、そして先程の魔物と私たちを追ってきた敵だ。

しばらく私はそこへ隠れて様子を窺っていた。

息遣いは確実にこちらへ近付いている。

後方の木陰から黒いものが現れる。

遠目からもその姿を捉えることができた。