私を覗き込んでいたのは、切れ長の緋眼。長い黒髪。深い端正な顔立ち。

頬や腕など、薄手の布地の下から現れている浅黒い肌には刺青なのか、濃紺色の幾何学模様的なペインティングが数ヶ所に施されている。

外見上では20〜30歳代の男性だった。

簡単に一言でいってしまうと、近寄りがたい感じの「美形」である。

アレックスやディーンも美形だが、彼らのような柔らかい雰囲気は感じられない。

深紅の瞳の奥には凍て付くような鋭い刃と、触れれば一瞬で燃やし尽くされそうな焔(ほのお)が混在していた。

それはもしかしたら、彼が魔物だからかもしれない。

そう、魔物だ。

背後に携えているのは漆黒の翼。

それが少し距離を置き、私の視線へ合わせるかのように真っ直ぐに、こちらを見詰めている。

双眸は炎のように紅々としていたが、眼差しは氷のように冷たく感じられた。

「君は一体、どうやってこの中に入り込んできた?」

美形の魔物は私の眼を覗き込みながら、逆に訊いてきた。

「この中には俺以外は誰も入ってこられないはずだ。
それなのに君はどのような手段でここへ来た?
他にも複数の者が入り込んでいたな。
この結界を解いたのは君なのか、或いは他の者か?」