これを最初に解放したのは、約12年前。

当時はあたしもまだ普通の子供で、修行も開始していなかった。

実際、現場に居合わせた師匠に助けられなければ、このように生きてはいなかっただろう。

だが今のあたしは修行を重ね、ある程度の力は付いていた。そのための調整も重ねてきている。

それでもこの能力は、一度に2回が限度。

母体が魔物であれば簡単に制御できるものなのだろうが、人間であるあたしには、修行を積んでいてもこれが精一杯だった。

ヒトの身でありながら、内にある魔族の能力(ちから)を解放する。

つまり精霊力を自ら持つことの出来ない、ヒトの肉体の限界値を超えてしまうということだ。

最初は自身を生んだ母親を恨んだりもしたが、逆に今では感謝をしている。

能力が暴走するということは、限界を超えるということ。

限界値を超えるということは、予想外の能力が生まれる確率も高い。

上位クラスの魔物を、あたし一人だけで倒せるかもしれない。

とは言うものの、この能力に関しては、あたし自身も熟知しているわけではなかった。それゆえ、確実に勝てる見込みは皆無だ。

しかし例え一欠片であったとしても、その可能性を取り出すことはできるはずだ。

そのためだけにあたしは今まで生きてきた。

ヤツと戦うのは一度だけ。

その能力さえあれば十分だ。