たった一匹の獲物へ群がる獣たち。

周囲の草木をも巻き込んで、一気に激しさを増しながら丸呑みしていく。

「……ぐっ」

あたしはその衝撃に耐えきれず、左眼を眼帯で押さえ付けながら、地面へ顔を擦りつけるかのようにうずくまっていた。

一度に解放したのだ。両手はもとより、全身にさえ力が入らなくなっていた。

しかしそれはほんの一時的なものだと、今までの経験上から知っている。

今は貧血のような症状が現れてはいるが、体力や気力と同様でやがて回復する。

あたしは霞む右眼を無理矢理細めると、倒れている敵のほうへ顔を向けた。

そこに生えていた草木は、獰猛な獣にでも食い散らかされたかのような痕跡を残し、一本の道筋のようになっていた。

奴の通った痕(あと)だ。