「そんな!
アレックスさん〜無茶です〜。
怪我しているんですよ〜」

エドが悲鳴にも似た声を上げる。

アレックスは左腕を骨折し、まともに使える状態ではない。

しかし今は先程のように、痛がっている様子はなかった。

恐らく怪我をしてから大分時間が経過しているため、感覚自体が麻痺しているのだ。

「俺ならば心配はいらない。
ルティナ、君は君の成すべきことをするのだ。
そのための楯ならば、俺は喜んでなろう」

「でもアレックスさん〜それは自殺行為というものですよ〜」

「はっはっはっ、下手な冗談だぞ、エド。
俺は無論、最初から死ぬ気などない。
例え腕一本使えずとも、君たちの期待に応え、立派に努めを果たしてみせるつもりなのだ!」

アレックスはエドの忠告を軽く一蹴すると、片手で長剣を掲げ、闘志を辺りに撒き散らしながら胸を張っていた。

しかし。

(コイツ、分かって言っているのか?)

あたしは半眼で彼を見詰める。

現実問題として、エドの言っていることが正論だ。

この状態で戦ったとしても、恐らく足止めにさえならない。

敵の能力を考えるならば、間違いなく瞬殺だろう。



本当にコイツは『顔だけ熱血無鉄砲バカ』だ。