一体どのくらいの時が経っただろうか。

時計を持っていれば確認できるのだろうが、あたしは時間に縛られたくないほうだから、普段から持ち歩かない主義だ。

それでもしばらく手探りで歩いていたのだが、不意に微かな音が聞こえてきた。

立ち止まって耳を澄ませてみれば、それは何かのメロディのようでもある。

(敵? ……罠か?)

ここはヤツの空間。

当然あたしたちが中へ入り込んだことも、既に把握しているはず。

とはいうものの、変わらない風景の中を歩くのにも、流石に飽きてきたところだ。

例え罠だとしても、ここから抜け出せるのであれば何でも良い。

しばらくすると前方からは、明かりも見えてくる。

点滅して光っているようだ。

どうやら音はその方向から聞こえてくるらしい。

徐々に視界も鮮明になってきた。

そこには辺り一面、緑色の景色が広がっていた。

霧もいつの間にか晴れていて、あたしは少し拓けた場所に立っていた。

足下には膝丈ほどの草が、地面を覆い隠すかのように生えている。

この場を囲むように、鬱蒼と生い茂っている木々も立ち並んでいた。

周囲をざっと見回しただけでも、季節感が狂っているのが分かる。

上を見上げてみると、青空も広がっていた。

季節ばかりか、時間までも狂っていやがる。

ここはやはり、結界の中なのだ。