「強硬風拳(フォール・デュー・ヴィン)!」

術文を唱え、あたしは前へ飛び出していた。

あたしの術を纏った拳を、奴は2本の短剣で真正面から受け止める。

奴の踏ん張っている両足が、放たれた重い拳により地面へめり込んでいく。

「ちぃっ、もう少しで殺れたものを!」

相手が忌々しそうに舌打ちをした時、

「おい、君たち、何処へ行くのだ!?」

アレックスが何事か叫んでいる声が聞こえてきた。

敵から意識を逸らさずに横目で見ると、駆けてきた二人の背中が霧の中へと、消えていくところだった。

直後、彼もまた彼女たちを追っていく。

アレックスという「解錠器具」を失った霧は、徐々にそこも侵食しつつあった。

再び結界が閉じられようとしているのだ。

このままではまずい。

あたしは咄嗟の判断で相手を押しのけると、後方へ大きく飛んでいた。