「しかしこれくらいの怪我、俺には根性でどうとでもなるのだがな」

「脂汗を流しながら何を言っている。
痩せ我慢も程々にしないと、後で痛い目みるぞ」

左腕上腕部を押さえながら、汗を額に滲ませている彼を横目で睨み付けた。

術士たちが攻撃を放った際、その中の光の矢がアレックスの肩を掠ったのだ。

そこは防具に覆われていない『継ぎ目』と言われる部分で、術は丁度そこを通っていったらしい。

破れた服の下には青痣が覗いており、大きく腫れ上がっていた。

上から軽く押しただけで彼の顔は歪み、その感触で骨が折られていることに気が付いたのだ。

しかしあの時、術は確かに腕を掠っていた。

直撃はしていない。それはあたし自身が証人だ。

だが何故か皮膚は裂けずに、中の骨だけが綺麗に折られている。

彼の話では「人間の術に掛かりやすい体質になっている」らしい。

世の中にはそういう人間も確かにいるが、掠っただけでそこまでの効果があるのだろうか。

とはいえ「結界を破壊できる能力」も聞いたことがなかったから、強ち嘘ではないのかもしれないが。

「う……むむむぅ……。
これしきのことで悔しいが、俺もまだまだ修行に精進せねばなるまいな」

その辺に落ちていた棒きれで固定している腕を押さえ込みながら、アレックスは悔しそうに顔を歪ませていた。