「それは僕たち芸術士と〜エリスさんたち一般的な術士とは〜鍛え方が違うからですよ〜。
何故ならエリスさんたちが〜相手に直接作用できる能力に〜重点を置いて鍛練を積むのに対して〜僕たち芸術士は〜場の気配などを読む能力――〜即ち『感性』を重点的に〜鍛えているのです〜」

(……そういえば)

私が本格的に修行を始める前に、父から注意を受けたことがあった。

一般的な術士は視覚的能力を主に養っていくが、芸術士は目に見えない力――感覚的な能力に重点を置いて修行をする。

そのため、希望する術士の選択は慎重に……などというようなことを言われたのだ。

他の術士は修行初期段階であれば、種類を途中変更することも可能だ。

しかし芸術士の場合は根本的に修行方法が違うので、私たちが途中で芸術士に変更――或いはその逆も然り――することは、例え修行初期であっても容易にはできないらしい。

私の希望は最初から精霊術士だった。だから選択時において迷うことが一切なかったので、この話を今まですっかり忘れていた。

「ですからエリスさんが〜例え感知できなかったとしても〜仕方ないのです〜」

と唄いながらエドは、素早く横に移動した。

私も同時に彼の前に移動しながら、術文を唱える。

彼の背後から黒い影が、躍り出てくるのが見えたのだ。それと一緒に放たれている殺気も。

このくらいなら、私にも直ぐに感知できる。

「ここに長時間〜留まっていたら危険ですぅ〜」

「ええ、そのようね。早く目的地へ急ぎましょう」

魔物を弾き飛ばした私たちは、奴が追いかけてくる前に急いでその場を離れた。