「ちょっ、何す――!?」

窒息しそうになった私は、直ぐに起き上がって抗議をしようとした。が、今度は背中に衝撃が走り、またもや倒れ込んでしまう。

「ちぃっ! 逃がすかっ!!!」

その背中の遥か頭上から、怒声が聞こえてきた。

「ぎゃあぁっ!」

悍(おぞ)ましいほどの鳴き声とともに、慌ただしく動かしているかのような羽音も、直ぐ近くから聞こえてくる。

程なくして羽音と足音は、同時に遠ざかっていった。

一方私はといえば、背中から伝わってくる激痛と、上から押さえ付けられているかのような圧迫感のせいで、身動きが全く取れなくなっていた。

私は何者かにより、後ろから背中を思いっきり踏みつけられたのだ。

恐らく他の術士だとは思うが、向こうはこちらのことなど全く眼中にない様子だった。

顔は確認できなかったが、その声の雰囲気から容易に察することができる。

このような状況なので、当然と言えば当然だった。だからそのことに関しては、全く腹は立たなかったのだが。

「ふ〜、危なかったですねぇ〜」

エドが安堵の溜息を漏らす声が聞こえてきた。

「危なかったって、あんた……私を突き飛ばす必要なんて、なかったじゃない」

突き飛ばされたお陰で、通りすがりの術士に背中を踏みつけられ、痛い思いまでしたのである。

「いえ〜、狙われていたのは〜僕たちですよ〜」