「つまりこの男だけが、モンスター・ミストを破れるということなのか?」

「まあ……あなたの話だと、そういうことになるわね」

「な……」

彼女は私の言葉で、どうやら絶句している様子である。

理由は見当も付かないが、やはり私たちに対して、妙な勘違いをしていたようだ。

とはいえ、何をそんなに驚いているのだろうか。

私からすれば、モンスター・ミストを破壊できるという話のほうが、驚愕するべきことであると思うのだが。

「あたしの聞いている話と……いや、あれは元々あの魔物(おんな)が……何故疑いもしなかったのか……やはり頭に血が……正常な判断が……」

ルティナは額を押さえながら、何やら一人でぶつぶつと呟いていた。

だが突然顔を上げると、決意を含んだような目で、私とエドのほうを見る。

「よし。それじゃあんたたちとは、ここでお別れだ。あたしはこの男だけを連れて行くことにした」

彼女はそう言って、アレックスの腕を強引に自分の方へと引き寄せる。

「なに、少しの間借りるだけだよ。あんたたちは街で大人しく待っていればいい」

私がそれに対して答える前に。



ピィィィーッ!!!



耳を劈(つんざ)くような笛の音が、辺りに鳴り響いた。途端、目の前で閉ざされていた門が、ゆっくりと開かれる。

同時に、周囲もそれに向かって動き出していく。

その流れに逆らい、外からこちらへと傾れ込んでくる者たちもいた。私たちのいる部隊と交代するために、役目を終えて戻ってきた術者たちである。

私はあっと言う間もなく、交差するそれらの人々によって、揉みくちゃにされていた。

ここから抜け出すには、もう既に手遅れだったのだ。