「そして互いの指と指の隙間に、その指を1本ずつ絡めるのだ。
そうすれば普通に握っている時よりも遥かに、離れ難くなるではないか!」

「た、た、確かに離れないです〜。これならどんな人混みの中にいても、全く外れる心配がありません〜。
アレックスさん、これは世紀の大発見ですよ〜!!」

エドは私もろとも腕をブンブン振り回しつつ、アレックスを褒め称えた。

分厚い眼鏡に隠れていてその表情はよく分からなかったが、興奮しているのか、代わりに鼻の穴がいつもより開いている。

(全く……この、アレックス信者めが!)

私は心の中で毒づいたが、口に出しては言わなかった。単に呆れすぎて、喋るのが億劫になっただけである。

恐らくは指の関節が互いにストッパー役となり、外れ難くなっているだけであろう。別に「世紀の大発見」でも何でもない。

「ははは……アレックスは相変わらず、面白いことを考えるな。感心するよ」

私たちの遣り取りを隣で傍観していたディーンは呑気に、爽やかな笑顔を浮かべていた。

今は食事中ということもあり、先程まで被っていたフードは脱いでいる。

「しかしその繋ぎ方は」

続けて何かを言おうと口を開きかけたのだが。

「……ああいや……うん、何でもないんだ」

私たちの顔を見るなり急に気が変わったのか、それを止めたようだった。

ディーンが何を言い掛けたのかは、非常に気になるところである。が、疲れの押し寄せてきていた私にはどうでもいいことだった。

途中で言うのを止めたということは、どうせ大した内容ではないのだろう。