「エリスさんの方向音痴は〜僕も知っていたので〜ちゃんと手を繋いでいたはずなんですけどね〜。
あの混雑の中だったから〜思わず手を離してしまったのです〜」

ネタシナ町へ到着した時には丁度、国王歓迎パレードの真っ最中だった。

その町には保養所の一つがあるらしく、年1回は訪問するらしい。私たちは運悪く、それに遭遇してしまったのである。

「そこで俺は考えたのだ。方向音痴のエリスと手を繋いでいても、それが完全に外れることのない方法を!」

アレックスはいつもの得意げな態度で、エドに向かって胸を張っていた。

私はその様子を見ながら、心の中でひっそりと溜息を吐く。そもそも「方向音痴」と「手を繋ぐ」という行為は、何の脈絡もない。

「ではエド、手の平を外側に向けて前へ突き出してみてくれ」

「こうですか〜?」

エドは言われた通りに目の前へ手を突き出した。

「今度はエリス、エドの手に自身の手を重ね合わせるのだ」

「え、私もやるの?」

「うむ、これは君のためでもあるからな。また同じようなことが起きてしまった場合、今度は捜し当てることができるかどうか……」

「はいはい、分かったわよ」

そう言われてしまったら、私には逆らうことができなかった。渋々エドの手に自分の手を重ねる。