私たちはこれから討伐隊へ参加するということで、少しでも腹の足しになりそうなもの――パスタを注文していたのだが、まさかこれほどまでに不味いとは思わなかった。

私が頼んだのは海鮮パスタなのだが、麺が水っぽい上に、歯ごたえの全くない食感なのである。

当然の如く、私はそのままフォークを置いていた。

「なんだ、もう食べないのか」

目の前で同じように食事をしているルティナは、そんな私に気付くと睨んできた。

もしかすると怒っているのかもしれない。何故ならこの食事が、彼女の奢(おご)りだからだ。

「ごめんなさい……ちょっと食欲が湧かなくて。疲れているのかも」

肩を窄めながらも、申し訳なさそうに言い訳をする私。

「僕もちょっと〜食欲ないです〜」

隣で食べているエドも眉を顰めつつ、どさくさに紛れて便乗してきた。彼は普段であれば人一倍食欲旺盛なのだが、流石にこの料理には手を付けられないようである。

「何!?
エド、君が食べないとは珍しいな」

その前では海鮮パスタにかぶり付いているアレックスが、吃驚した表情でエドを見詰めていた。

因みに彼は、「今までに味わったことのない珍味だ」と言いながら食べている。

彼女のほうは、こちらの苦し紛れの言い訳に気付いている様子もなく、私たちの皿を両手で掴むと、無言でその中身を自分の皿へと移し替えていた。