「あそこへ近付くには、それが一番手っ取り早い方法だからだ」

「でも私たちが討伐隊へ参加するのは、物凄く都合が悪いのよ」

「それはあんたたちが、まだ駆け出しの巡礼者だからかい?」

「う……まあ、そんなところね」

何故私たちが「駆け出し」だと分かったのだろう。

いや、そんなことはどうでもいい。

今の私は腕に付けられた刻印のせいで、かなり術力が落ちている。それにアレックスの特殊能力のこともある。

人間の術にかかりやすいということもあるのだが、もし彼が術文もなしで術を防御している場面を他人に見られてしまったなら、即「魔物」だと疑われる心配もあるのだ。

(あれ、でも)

私はふと、あることに気が付いた。

ルティナは疑問に思わないのだろうか。

『何故私たちがあの結界を、簡単に破れるのか』ということを。

「ともかく場所を変えよう。ここは落ち着かない」

彼女は周囲を見回しながらそう言うと、先頭を切って歩き出した。