「ところで君は一体、誰なんだい?
いつからそこにいたのだ」

アレックスはルティナに気付くと、いきなり不躾な質問をしてきた。彼女は当然、怪訝そうな表情をしている。

「さっきからずっと居たが……それに名は既に名乗ったはずだ」

「む? 名乗っただと???
俺には全く、名乗られた憶えがないぞ」

真剣な表情でキッパリとそう返したアレックスに対して、エドが代わりに答えた。

「この方は〜ルティナ・マーキスさんといって〜魔物ハンターだそうですよ〜」

「魔物ハンター?
それは一体、どのようなものなのだ??」

(そこから説明しないといけないのか…)

正直、面倒だ。

私がうんざりして沈黙していると、エドがまた代わりに口を開いた。

「魔物ハンターというのは〜ギルドにおいて〜…(以下略)」

エドの長々しい説明が始まった。

私にとって彼の説明は、長く退屈なものでしかなかった。途中で横道に逸れるし、更に要領を得ない話が延々と続くのだ。

しかしアレックスにとっては逆にそれが、とても分かりやすいらしいのである。

なので彼への説明が必要な場合には、時間さえあれば大抵エドにしてもらっていた。



その間暇を持て余していた私は、常に携帯している懐中時計を眺めながら、意味もなく時間を計っていた。

が、2分が経過した頃になって物音に気付いた私は、ふと何気なく隣へ顔を向けてみる。

先程までのルティナは、残りの饅頭を頬張りつつ彼らを無言で見ていた。

しかし今は前を向いたままで、その空箱を力任せに千切っている。