奴らは互いに交差しながらこちらへ駆けてきた。

あたしは再び「風」に電撃を附加させて、奴らの持つ短剣(ナイフ)を同時に両手で受け止めた。

あたしはそれらを受け止めながら口角を上げる。

「お前らもお目出度いな。そんな定かでないものを欲するために、あたしに殺られたいというのか」

「真実は貴様を食すれば分かることだ。
それに噂のあるところに、火種がないとも限らないしな」

あたしは後方へ飛んで再び間合いをとる。しかし奴らは透かさずこちらへ向かってきた。

片方の魔物は、真正面から術を放ってくる。

あたしはもう片方の繰り出してくるナイフを受け止めながら、その術を躱す。が、今度はあたしの脇腹を掠めた。

そろそろあたしの体力が持たなくなってきているようだ。動きも先程より鈍くなっている。

それは奴らも同じはずだ。

先程までは攻撃に手応えを全く感じていなかったが、今は拳に奴らの感触を微かに感じるようになった。

それにあたしと同様、動きも鈍くなっている。

だがあたしは攻撃の手を緩めることができなかった。

2対1。

無論数の問題ではないが、気が少しでも緩んでしまった時、恐らくそれがあたしの最期だ。

あたしは攻防を繰り出しながらも、奴らを如何にして同時に倒せるか考える。

(こうなったら、下の建物でもぶち壊してみるか?)

要は何か、突破口さえ見つけられれば良いのだ。

―――だが突如。

何かの砕け散るような鋭い音とともに、空が割れていた。