「お兄ちゃん!!!」

「ん…?さくら?」


つたない足取りでこちらへ向かって来た幼い妹。名をさくらという。


「お兄ちゃんの馬鹿あ!!!なんでお菓子食べちゃうの!あれ私のなんだよ?」


言われて少し考えた。俺がさくらのお菓子を?記憶にないな…
顎に軽く手を添えつつ、視線だけを下へとむける。頬を膨らませ、むくれているさくらを眺めながら記憶を辿ったが、やはり思い出せないでいる。

「俺じゃないよ?」

「嘘つかないで!」

「嘘ついてないよ。父さんが食べたんじゃねえの?」

「お父さんが私のお菓子食べるわけないもんっ!」


何故そう頑なに俺が犯人だと決めつけるのか。朝からこう耳元で騒がれてはうるさくて仕方ない。

(はぁ…。)

「ん。一階に父さんいるだろ。聞いてこいよ。」


指で部屋の扉を指し示す。ここは俺の部屋だ。出てすぐ階段があって、一階のキッチンに繋がっているのだ。


「………。」


さくらは、なんとも言えない渋い顔でドタドタと部屋を出ていった。
もう高校生だというのに、いつまで経っても幼いままだ。