私は歩き続けた。
陽くんを好きだと分かった、この歌舞伎町を…。
井端組を出る時、いろいろな人にとめられた。
でも、陽くんのため。
振り払って出てきた。
それから1時間。今の状態。
「はぁー。」
私に帰る家なんかない。
「海に行こうかな。」
私は小さい頃、海が大好きだった。
だから。
「ねぇ、今ため息してたね。暇?遊ばない?」
ナンパ?もっと可愛い子いるのに。
でも、いいかな。
「うん、いいよ。」
「本当にいいのか?」
私がナンパ男に答えると、後ろから低い声がした。
「…っ!河瀬組!」
組?ヤクザ?陽くんと一緒だ。
「…陽くん…」
「いや。河瀬亮だ。」
少しの期待をもったけど、違った。
「こいつは俺の女だ。それでも手ぇ出すならやるけど?」
河瀬さんが言うと、ナンパ男は走って行った。
「おい、お前。こんな所にいたら、またナンパされるぞ。早く帰れ。」
河瀬さんが私を見て言った。
よく見ると、顔立ちがハッキリしていてかっこいい。
「…私に帰る家なんかないんです。
ありがとうございました。」