その昔、世界は色褪せていた。何が原因かもわからない"褐色"が人々を蝕んでいた。



色とりどりだった世界は少しずつ褐色していき、色をなくしていった。

花、木、草、動物、人。


みな色を失うと影のように体が透けて、生きる気力さえも失っていった。道には人が転がり、音もなく、かつて栄えたいくつもの国が滅びた。


そして褐色が始まって10年が過ぎ、世界が崩壊を目の前にしていた時、一筋の光が射し込んだ。





太陽の光だ。



その光はたちまち広がり、世界に色を戻していった。人々は命を吹き込まれたように次々と体を起こし、大切な人と抱き合った。