それから恭也が家を出た後
入れ違いに久美子が訪ねて来た。






『こんにちは』



「久美子ちゃん、いらっしゃい。どうしたの久し振りね」



『近くに用があってちょっと寄ってみたんです。あの…恭くんはいますか?』



「私の頼みも聞かずについさっき出掛けて行ったわ」



『頼みって…?』



「雅也の着替えの入った紙袋なんだけど」



『え』



「急な当直続きだったから着替えが欲しいって電話があってね。恭也に届けてって言っても聞いてくれなくて…私も今日は家を空けられなくて困ってたの」



『あっじゃ私で良かったら届けてもいいよ』



「本当?いいの?」



『暇だし』



「ありがとう、久美子ちゃん。ちょっと待ってて荷物持ってくるから」



『はーい』