黒と白


ダン!

その音と共に沖田が出した技は

「へぇ…。結構やるね。」

三段突きだった。しかし、刹那はその技をかわし、

「なっ!何処へ行った。」

沖田の前から消えた。そして、

「終わりだ。」

総司が背後の気配に気がついた頃には、刹那が沖田の首に木刀を当てていた。

「い…一本!」

近藤のその言葉と共に、沖田の体は崩れ落ちた。

「僕が…負けた…?」

「嘘だろ…?総司を負かしちまうなんて…。」

その時、俯いていた総司が、突然顔をあげ、刹那へ問いかけた。

「刹那さん。どうして貴方は僕の後ろへ回りこめたんです?」

「どうして、って…沖田さん、貴方は三段突きを出した瞬間、勝ったと思いました?」

「思いました。避けられるとは思ってませんでしたから…。」

「その思い込みが隙を生んだんです。そして俺は、その隙をついて、後ろへ回りこんだんですよ。」

「そうだったんですか…。僕もまだまだですね。」

そう言って、総司はまたヘラヘラ笑った。

(だが…力の差では負けていたがな。)

「で、これで俺の実力、認められたんですよね?」

「あ…あぁ、そうだな。お前等!これで、納得できたか?」

「わ…分かったよ。」

「お…俺も、お前の実力は認めてやる。」

「だけどあんた。何処の流派なのさ。見た所、ただの喧嘩剣法じゃ無いみたいだし。」

「ねぇ、君。」

沖田の隣に立っていたはずの刹那は、気がつくと藤堂の側に立っていた。

「な…なんだよ!!」

「君さ…そんなに他人に関わろうとすると、」

――いつか自分の身を滅ぼす事になるよ――

藤堂はその刹那の言葉に、鳥肌が立った。

(なんだ?こいつ…凄く、怖い…)

小さく呟いた刹那の声は、恐ろしいくらい冷え切っていて、そしてとても、

「悲しそうだった…。」

「何言ってんだ平助?さっさと帰るぞー」

「へっ?あ。あぁ!まってよ左之さん!」

藤堂が物思いに耽っているうちに、刹那達は副長の部屋へと戻っていた。