彼女の言う事が正しいとすると、俺達は今、その建物の中にいるという事になる。
何なんだろうか…この建物は…
何故こんな所に…?
何故隠す必要がある…?
何故……?
様々な疑問が頭の中を巡って行く…
しかしその疑問に答えてくれる様子もなく、平然と女性は話し出した。
「そうだ、シュウ。あなたに見せたい物がある。着いてきて。」
「あぁ…」
見せたい物…?
何だろう?
シュウが頷くのを見ると、女性は背を向け、歩き出した。
その後を追うマリンとライナス2人。
そして3人の後ろをシュウは追うのだった。
長く続く廊下。
奥に進む度、多くの部屋が並ぶ。
途中で、窓から外の様子を伺ってみた。
すると、確かに新緑の木々がこの建物を取り囲んでいる。
彼女の言う事は本当だったらしい。
奥へ奥へと進む度、様々な人々とすれちがった。
にこやかに微笑み、挨拶をする者。
資料を見つめ、こちらに気づく事なくすれちがう者。
特に印象に残ったのは、微笑み返したライナスの笑顔を見て、黄色い声を上げる少女達だ。
あの笑うと顔を出す八重歯、それに、愛想の良い性格が、女性の心を引きつけるのだろう。
黄色い声を聞く度に、先頭を歩く女性はライナスを睨む。
が、本人は気にしていないらしく、睨まれても、得意のその笑顔で微笑むのだった。
女性は、ライナスに気があるという訳ではないようだが……
どういう関係なのだろう……

