少年は、行動を起こし始めた。
未だ血の溢れる胸元へと手をかざし、目を瞑る…
そして…
「傷を治癒する暖かな光……我が掌に宿り給え……」
呪文…
魔法使い。確か、少女がそう言った。
この少年は今、魔法を使っているようだ。
治癒の魔法。
傷、病気を取り除き、健康な体に治す。
簡単な魔法もあれば、大ケガでも治す事ができる、最強の魔法もあるという。
その魔法を今、少年は使っている…
ルリの傷を治す為…
呪文が終わると、胸元へとかざしている掌から、淡い光が放たれ、傷口を覆った…
光に包まれた傷口から、みるみる内に、溢れ出ていた大量の血が止まっていく…
すごい…
その言葉しか、頭の中に浮かばなかった…
今まで魔法など目の前で見た事などはない…
しかし、今まさに目の前で…
現実に…
魔法を目の前で…
見ている…
数分の後…
「よっしゃ、終わった。」
少年はそう言うと、かざしていた手をのけ、額の汗を拭うようにして、溜息を吐いた。
血に染まった服…
しかし、そこからは出血は止まり、傷口もないようだ…
助かった…
安心して、体から力が抜ける…
よかった…
本当に、よかった…

