倒れた少年の身体には所々に傷があり、力無く伸ばされた手には漆黒の剣が握られていた。



 「一週間もぶっ続けでやってきたんだ。疲れて眠ってるだけだよ。」


そう言うフレイも眠そうに大きく欠伸をし、真っ赤な髪を乱暴にかいた。




 「DRAGONも目を覚ましたし、自分の力にも慣れてきた。俺があいつにできる事はもうない。後は頼んだぞ。」


爽やかに笑い再びカイリの頭を撫でるが、鬱陶しそうに払いのけられカイリは倒れる少年、シュウへと歩み寄る。





 「ラルフ、おぶってやって下さい。」


 「は?」


シュウの状態を確認し、後ろをついてきたラルフに言うが、ラルフは何言ってんだと笑って見せる。




 「おぶれって、ルリやマリンやロリみたいな女だったらいいぜ?後、お前もセーフ………ぐっ…………」


 「死にたいんですか?」


ふざけたように言うラルフに、カイリは肘を思いっきりラルフの腹に突きつけ真顔で睨みつける。


鳩尾に入ったらしく、ラルフは腹を押さえ首を横に振ると、おとなしくシュウを背負いカイリの横に並んだ。







ラルフを横目で確認すると、カイリは短剣を地に垂直に持ち、ゆっくりと手を放した。


カイリの手から離れた短剣は、地に突き刺さると思われたが、刃先が地に触れると共に短剣は液体へと変わり、2人足元に水たまりができた。





 「気をつけてな。」


水たまりの中央に立つ2人を見てそう言うと、爽やかに笑って軽く手を振るフレイ。





 「フレイも元気で。」


軽く手を振るフレイにカイリは初めて笑顔を向けると、水たまりは青く輝きだし2人を包み込む。


キラキラと光が雫となり舞う頃、2人はこの地から姿を消した。







ふと空を見上げると、懐かしそうに目を細め深く深呼吸。


青い空の下、静かに時が過ぎて行くのだった。