怖い…

苦しい…

辛い…

悲しい…



この感情が頭の中で渦を巻く…




壁も、床も、天井も、どこを見渡しても黒一色…



そんな場所の中央に、茶色の髪に毛先に緩くウェーブのかかった少女が座り込んでいた…





目を開いていても、目を閉じていても、同じ風景、同じ景色…


手を伸ばしても何もない…


名を呼んでも、誰もいない…


音もなければ、匂いもない…




立ち上がって歩き出せば、底のない闇の中に落ちてしまいそうで、恐くて身動きなんか取れなかった…





寒くもないのに身体は震え、胸の奥が熱くなる…


瞳には雫が溜まり、耐えきれず雫は頬を伝う…






闇の中、彼女は自分の存在を確かめるように膝を抱き、震えを抑えるように腕を握り小さく縮こまる…





そんな彼女の周りから、不思議な液体が忍び寄る…



流れてきたその液体はゆっくりと距離を縮めると、彼女の足を濡らし量を増す…




爪先、足首、臑、膝、肩…


その得体も知れない液体は嵩を増し、彼女の姿を隠して行く…





それが、水のように透き通り透明なのか、それとも、この闇のように真っ黒で濁っているのか、どんな色をしていて何なのかもわからない…





その液体の中に沈んで行く彼女は、膝に顔を埋めたまま逃げようとはしなかった…


ただただされるがままに身を任せ、微動だにしない…










 「……誰か………助けて…………」




彼女の姿が液体の中に埋もれ、見えなくなる頃、彼女は震える声で小さく呟いた…




だがその声は誰にも届く事はなく、この闇の空間に虚しく消え去った…