「それにしても、変わったは……」


 「変わった?誰があるか?」


長い廊下を進む中、カナメはどこか遠い目をして呟いた。


そんな彼女の声に顔を上げたマリンは首を傾げカナメに問う。




 「ライナスよ。あいつ、今まで自分を守る事しか考えてなかった。なのに、あんなにボロボロになるまで戦うなんて、予想外って言うか、心配って言うか………」

 「心配?」


カナメは無言で頷くと、隣を歩むマリンへと目を向けた。


いつもと違うカナメの瞳に、マリンは真剣な顔をし見つめ返す。





 「禁忌って知ってる?」


 「大体は知ってるあるけど、それがどうしたあるか?」


 「ライナスは、禁忌の魔法を全て知ってる。その禁忌の中には、命を代償にして使う魔法がある。」


 「命を代償にして……それって、死ぬって事あるか!?」


驚いたように言うマリンに、そう…と悲しそうな顔をするカナメ。


何か思い出しているのか、その瞳には涙が滲んでいるように見える…





 「それが恐いのかな……いつも憎らしい事ばっか言ってるけど、そんなあいつがいなくなるのが、恐いのかな…………なんてね。」


 「カナメ………」


ふざけたように笑ってみせるカナメだったが、どこか辛そうに見えるのは気のせいか…


その笑顔を見つめていたマリンは、悲しそうに目を細め何か言おうと口を開くが、何も言えず口を閉じると彼女から目をそらす…




無言で下を向いて歩いていると…



 「マリン、あんたもね。」


 「え?」


マリンの黒髪をくしゃっと撫で言うカナメ。


突然の事に見上げると、カナメは優しくマリンを見つめていた。




 「あまり無理しない事。そんな傷、もう二度とつけないでよ?」


眼帯を指差しそう言うと、ニッとライナスに似た笑みを見せる。


マリンはゆっくり頷くと、ただただ彼女を見上げるだけだった…




いつの間にか降っていた雨は止み、穏やかに雲は進んで行く。


陽は元気に地を照らし、葉につく雫がキラキラと真珠のように輝いていた。