「カナメ、準備できたぞ。」


やってきたのは、銀色の髪に肩耳に大きなピアスをした男性、ナツキである。


荷物を抱えたナツキにわかったと片手を挙げると、ライナスへと目を向け妖しく微笑む。





 「仕事頼みたいんだけど、任せてもいいかな、ライナス君?」


 「仕事……?」


ライナスは嫌な予感がし後退るが、がっしりと肩を掴まれ逃れられない。




 「実験室の片付けなんだけど、私はマリンの治療をしなくちゃいけないし、人手も足りない。あんたしか頼めないのよ。」

 「嫌………」



断ろうとするも、有無を言わさず何度か肩を叩き任せたと一言。


ライナスの背を押しナツキにウインクするカナメ。


ナツキは笑顔を向けるとライナスを逃がさないよう荷物を預け肩を組んだ。





 「頼むよナツキ、俺まだ病み上がりだぜ?見逃してくれよ………」


 「ゆっくり休めと言いたい所だが、後でカナメに何て言われるかわからないだろ?おとなしく言う事を聞いておいた方がお前の為だぞ?」


歩を進めながらナツキに頼み込むが、ナツキは諦めろと微笑みライナスの肩を叩く。



 「まぁ、魔法を使えばすぐに片付く。」


 「あぁそっか。魔法を使えば……って使えねぇよ!」


 「何故だ?」


 「実験室だろ?魔法は厳禁なんだよ………」


ライナスは1人腕で涙を拭うような仕草をしながら嘆くのだった。








 「それじゃあ、部屋に戻るわよ。」


ライナスとナツキの後ろ姿を見つめていたマリンとカナメはライナス達とは反対方向へと歩き初めた。




 「今回は多目に見るけど、次逃げたら承知しないからね?」


 「わかったある……」


カナメから見下ろされおとなしく歩を進めるマリン。


彼女は治療中に部屋から逃げ出したようだ。