周りを木々に囲まれた、何もない広い地。
その中心に、白衣を着た色白で短髪の男性が1人。
腕組みをし、考えるように顎に手を添える彼は、じっと前方を見つめ立ち尽くす…
すると突然、何もないこの地に風が吹く…
穏やかなその風を頬に受けながら、男性はゆっくりと顔を上げる…
そこには1人の男性が立っていて…
白衣を着た彼は目の前に現れた男性に頭を下げた。
突如現れたその男性は、怪我をした少年を抱え、頭を下げた男性に爽やかに笑みを見せた。
「久しぶりだな、レオン。」
「元気そうで何よりだよ、フレイ。」
フレイと呼ばれた、真っ赤な髪の男性に微笑みを返すレオン。
2人は知り合いのようで、何だか嬉しそう。
だが、どこか顔色が悪いのは気のせいか…
フレイは笑みを消すと、腕の中の少年を見下ろし、顔を曇らせる…
「すまない……ライナスは救出できたが、マリンは……」
「嫌、お前が来てくれて助かった。ありがとう。」
すまなそうに言うフレイに、レオンは柔らかく返す。
その声にフレイは少年をレオンに預けながら、もう一度謝った。
「大怪我は腹部の傷程度だ。治療をすればよくなる。」
レオンは少年の怪我を確認し、わかったと一言。
すると、レオンの顔色を伺いフレイは口を開く。
「あまり無理するなよ。ぶっ倒れるぞ。」
笑い事のように、笑みを見せながら言うフレイ。
そんなフレイにレオンも反抗するように言う。
「人の事言えないだろ?顔色が悪い。長時間ここにいるのはよくないんじゃないのか?」
「長の監視下にある以上、現世にいる時間は限られているからな……」
晴れ渡る空を見上げ、ぼそりと呟くフレイ…
どこか悲しそうな彼の瞳を見て、レオンは目を伏せるが、優しく笑って見せた。
2人は微笑み合うと、じゃあな。と一言。
それだけを交わすと、共に背を向け歩き出す…
互いに振り返る事なく、姿を消した…
誰もいなくなった広いこの地は静けさを取り戻し、ザワザワと辺りの木々が揺れる音が心地よく響いた…

