太陽の姿を包み込む厚い雲を追い、壊れた家々が立ち並ぶ町の前へとやって来た1人の男性。
入れ墨と腕の傷が目立つ男性、フレイである。
町から吹いてきた強い風が、彼の燃えるような赤い髪を揺らした…
その風を身に受け、驚いたように目を見開き、ゴクリと息を呑む…
「何て、魔力だ…」
吹き抜けた風は強大な魔力を表し、フレイの身を奮い立たせる…
この町の中に、自分が探している人物がいると確信し、足を踏みだそうとする…
が…
足を上げたつもりが、一歩も前に進む事もなく、ただ立ち尽くしたままだった…
不思議に思い、何度も試みるが…
体はびくともしない…
まるで、町に入るのを拒むかのように…
動かない体に苛立ちながら、舌打ちをすると、ふと空を見上げた…
見上げた空は、灰色の雲が覆っていたはずなのに、今はその雲の姿はどこかへ消え、眩しい太陽が姿を現していた…
その太陽を目にした瞬間、動かなかった体が自由になり、バランスを崩しながら町の中へと足を踏み入れる…
足早に町の中を歩きながら、魔力を辿って目的の人物を探す…
中心地辺りに来た所で、大量の血溜まりを目にした…
その血溜まりに胸騒ぎを覚えながら先を急ぐ…
様々な思いを巡らせながら、壊れたばかりであろう家の中を覗き、その視線を前方へと向けた時だった…
地に倒れる、1人の少年の姿が目に映った…
うつ伏せに倒れる少年、ライナスは、息をしているのかもわからない程に身動き1つ見せない…
そんな彼に走り寄ると、首元に手を添え無事かどうか確かめる…
「…息は…あるな……」
そう呟くと、フレイは辺りを見回した…
捜索中のもう1人の人物を捜しているのだ…
だが、辺りには人影1つない…
再び倒れるライナスへと目を移した、その時だった…
フレイは頭を押さえ、顔をしかめる…
「クソっ……時間か……」
頭痛でもするのか、苦しそうに言うと、ライナスを抱え姿を消す…
フッと風が一吹き…
人がいた面影を消し去るように、町全体を吹き抜けた…

