2つの音が時と共に流れ、音を失った時、バタリと何者かが地に倒れた…



荒い息を吐きながら、拳を握ろうとするが、少しも指が動かない…




 「…やっべっ……魔力切れ…かな………」



そう言葉を漏らしたライナスは、目の前から消えた人物が流したと思われる血を見つめる…



その血から目を反らし、霞む視界に白い魔物を映しながら、意識を手放した…






牙を剥き出し、腕から血を流しながら、獲物を仕留めそこねた魔物は、ライナスへと一歩一歩距離を縮めていた…



その魔物は、意識を失ったライナスを襲うつもりだ…




彼まであと一歩となった時だった…


突然空間が歪み、縦に裂ける…


するとそこから、数本の真っ黒い人間の腕のような物が姿を現し、魔物を覆うように伸びて行く…



その腕は白い魔物の体を掴むと、闇の空間へと引きずり込む…




悲鳴を上げながらもがく魔物の姿は闇の中へと消え、裂けた空間が閉じると共に、その悲鳴も消え去った…






静かさを取り戻したこの町に、倒れる少年の姿と、所々に流れた血の跡だけが残っていた…


倒れた彼の身を、厚い雲から姿を現した太陽が、優しく包み込む…