彼へと背後から襲いかかろうとするマーガレッド…

近くにあった鉄の棒を手に取ると、自らの能力で武器に変える事すら忘れ、鉄の棒を高々と持ち上げた…




 「ああぁぁぁーー!」


唸るように声を上げながら、鉄の棒を振り下ろす…



その瞬間、フッと風が一吹き…

真っ正面からきたその風に、反射的に目を瞑りながらも、確実にライナスの頭を狙う…





鉄の棒は、ライナスの頭に命中した…はずだった…


なのに、鉄の棒を握るマーガレッドの手には、その感触が伝わってこない…



目の前に、確かに彼はいる…


どうなっているのかと、眉を寄せながら、ハッと棒の先へと目を向けた…



その手に握る棒の先を見た瞬間、彼女は目を見開く…


握った先にあるはずの棒の先が、何かに切り落とされたようになくなっていたのだ…

鉄でできた頑丈な棒など、そう簡単に切れる事はない…

なのに、手に握る棒と、地に転がる棒は、元々繋がっていなかったように、切り離されている…



短くなった棒を握ったまま、動かなくなったマーガレッド…


そんな彼女の耳に、突然入ってきた声…




 「……これで、終わりだ…」


疲れたような、低いその声を耳にした彼女は、落としていた視線を元に戻す…


そこには、顔色の悪い少年が、荒い息を吐きながら立っていた…


少し伏せた瞳はマーガレッドを見上げるように睨み、右手には銃を持つ…



その瞳は恐ろしく、銃口を向けられた彼女は、手にしていた棒を落とし、身震いをする…



彼の指が、引き金へと伸びた瞬間、彼女は逃げようと後退るが…




背後から迫る、唸り声と足音…


振り返らなくてもわかる…

何が近づいてきているのかも…

自らの身に、危険が差し迫っているという事も…



逃げられない…

そう察知した彼女は悔しそうに歯を噛み締め、拳を握る…


そんな彼女の額から、汗と共に血が流れ、その視界をぼやかした…

それと共に、覚悟したように目を瞑る…



何かが地を力強く蹴った音と、銃声の音が、同時に鳴り響いた…