血の雨が止み、所々に小さな血溜まりが姿を現す…
その中にある、一際大きな赤黒い血溜まり…
ボーイッシュな髪をした女性は、その血溜まりへと、何の戸惑いもなく足を踏み入れた…
血溜まりの中心で足を止め、足下を見つめる彼女…
そこにいるはずの人物の姿がない事に、微かに眉を潜めながら、血溜まりの上に浮く、服の切れ端を見つめる…
じっとそれを見つめながら、右手を横に伸ばす…
すると、どこからか刀が現れ、その手に握る…
そして、その刀を地に対して垂直に持ち、勢い良く小さな布を突き刺した…
浮いていたその布は血の中に沈み、その身を真っ赤に染める…
それを見つめ、彼女はそこから姿を消した…
所々に形作られた血溜まりと、地に突き刺した刀を残し…
「…っ………ハァ…ハァ…ハァ……」
肩を押さえ、大きく息をする少年が、ある家の壁に、身を隠すように背をつけて立っていた…
そんな彼の身体は傷だらけで、ボロボロだった…
腕も、脚も、何かに斬られたような傷が所々あり、その傷から血が滲む…
息を整えながら、これからどうするべきか、思考を巡らす…
敵の前に出れば、相手の思う壺…
魔法も唱える暇もない…
そんな状況で闘っても、時間の問題だ…
このまま遠距離で攻撃を仕掛けるしかない…
そう考え、印を組もうとした、その時だった…
「見つけた…」
突然聴こえた、背後からの声
その声に驚き、振り返ろうとしたが、体が動かない…
背後の人物は、ライナスに抱きつくように後ろから腕を回し、ピッタリと彼にくっついていたのだ…
そして、その人物は彼の肩に顎を乗せ、耳元でソッと囁いた…
「どこに逃げたって、無駄だよ…」
と…
その声はどこか冷たく、棘を持つ…
すぐ側でその声を聴いたライナスの体は鳥肌がたち、嫌な汗が額に浮かぶ…
石のように動かなくなった身体を、何とか動かそうとしている時だった…
「!っ……!」
腹部に走った鋭い痛み…
そこから流れる何か…

