このままでは駄目だと、何とか思考を巡らすが、いい案が浮かんでこない…
そうこうしている内に、彼の足は何かを踏んだ…
水溜まりを踏んだような、ヌルッとした感覚…
棘から身を反らし交わすと、視線を落とし、足下を見下ろした…
そこは、真っ赤に染まった、血溜まりの中…
彼が腹部から大量に流し作り出した、血溜まりである…
地獄の中に引きずり込もうとする、闇の手が伸びてきそうな、そんな錯覚までも引き起こす、赤黒い血溜まり…
その中に、痛みと恐怖で歪む自分の顔が映っている…
息を整えながら、血の中に映る自分の姿を見つめていると…
その血溜まりの中に映った、ボーイッシュな髪をした女の姿…
そんな彼女は 何かを企むように笑っていて…
一気に現実へと引き戻される…
だが、その頃には、もう、遅かった…
ライナスの足下に広がる血溜まりが、沸騰したようにフツフツと身を揺らし、数十本…
否、数千本もの鋭い棘となり天へと一直線に伸びてゆく…
ライナスを取り囲むように伸びたその棘は、外からは見えなくなった獲物を仕留めるべく、猛スピードで中の獲物へと突き刺さる…
その中で何が起こっているのかなんて、考えたくなかった…
否、考えれなかった…
地獄のような、残酷なその中の事なんて…
考えたくなかった…
想像したくもなかった…
その出来事は突然起こり、あっという間に事を終えた…
ざわついたかと思えば、静まり返り、一瞬にして、何十年も時を止めていたこの町の時間を取り戻す…
高々と天へと伸びた赤黒い棘は姿を変え、小さな血液の粒となり、地に降り注ぐ…
雨のように降り注ぐその粒は、天が傷を負ったようで、痛々しい…
何滴もの血の雫が、この地に降り注ぎ、絵を描くように、所々に血溜まりを作り出していた…

