ドクドクと真っ赤な血が流れ行き、何もないこの地に血溜まりを作る…
苦しそうに肩で息をしながら、左膝と右手を地につくライナスは、脇腹に刺さった短剣の柄を握った…
彼は、心臓に迫り来る短剣から完全には逃れられないと判断すると、とっさに身を捻り、その攻撃を脇腹に受けたのだ…
心臓を貫かれるのを回避したが、脇腹に深々と突き刺さる短剣…
このままでは、出血の為命が危ない…
柄を握ったライナスは、顔を歪ませる…
そして…
深々と刺さるその短剣を引き抜いた…
「くっ……」
再び流れる大量の血液、今までの倍以上の血液が、傷口から流れゆく…
歯を食いしばり、痛みに耐える彼は、傷口に手を添え、簡単な治療魔法で止血する…
だが、それも応急処置の為、無理をすれば再び傷口が開いてしまう…
傷口に手を添えたまま、ゆっくりと立ち上がった彼は、マーガレッドを睨みつける…
「何で……何で魔法が効かねぇんだよ…!?」
悔しそうに叫ぶと、マーガレッドは鼻で笑う…
「効く訳ないじゃん。そんな低級魔法。僕達闇を、なめてもらっちゃ困るね。」
馬鹿にするように笑う彼女を見て、言葉を失ったライナス…
開いていた唇を、グッと閉じた…
「あ、もしかしてさっきの魔法、君の中の最強の魔法だったりした?」
何も言わなくなったライナスを見て、ハハッと短く笑う…
そして笑ったかと思えば、鋭く目を尖らせ、珍しく真顔になった…
「君の魔法じゃ、僕達闇に怪我を負わせるなんてできない。触れる事だって、ね。」
そう言った彼女の姿はライナスの目の前にあり、驚き目を見開く彼を見上げると、口角を上げてにやつく…
「僕達闇の前じゃぁ、君達人間は、無力なんだ。」
ライナスを見上げたまま、右手を挙げようとするマーガレッド…
そんな彼女の動きに気づき、ライナスは目の前の彼女を突き飛ばすと、後ろに後退する…

