BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~


家は潰れ、木片が辺りに散らばる…

割れたガラスは粉々になり、鋼の釘は錆び付いていた…



灰色の厚い雲が、その町の上空を覆い尽くす…

光を失った町に、闇が漂い占領していた…




物静かなこの町の地面に突然現れた、青く輝く複雑な魔法陣…


その魔法陣は、巨大な風を巻き起こし、身軽な小石達を散らせ、ガタガタと家々を揺らす…




その風が収まってくる頃には、人影のなかったこの地に、2人の人物の姿が現れた…





 「随分と遠くまで来たね………

…潰れた町かぁ……ここだったら、誰も傷つかないって訳だ。」


ボーイッシュな藍色の髪に、ミニスカートを履いた、血色の悪い肌の女、マーガレッドは、辺りを見回し軽く爪先で地を蹴る…


小さな砂埃が風に乗って流れ、その姿を消した…




嫌味に笑う彼女を睨むように正面に立つ、赤みがかった髪の襟足をのばし、疲れたのか微かに開く唇から八重歯の覗く少年、ライナスは、嫌味に笑うマーガレッドを見て顔を歪める…




 「でもさ……こんなガラクタだらけの場所、君に有利とは思えない………

僕の力、忘れた訳じゃないよね?哀れな魔法使いさん?」



悪戯に笑う彼女は両手を上げると、カタカタと辺りのガラクタが揺れだした…

そしてそれは宙を浮くと、様々な形に姿を変える…


腐敗した木片は日本刀になり、割れたガラスは鋭い鎌になる…

砕けた煉瓦は重い斧となり、錆びた釘達は鎖ガマに…


宙に浮いたそれらの武器は、フワフワと身を踊らせてマーガレッドの背後を漂った…



今にも襲いかかってきそうな武器を目にし、ライナスは息を呑みながら、マーガレッドを睨んだまま口を開く…


 「もし……もし、俺を倒し、立ちはだかる人物が誰もいなくなったとしたら、お前は再び研究所を襲うのか?」



突然の問いに、マーガレッドはキョトンとしながらも、腹を抱えて笑い出す…

そして、藍色の瞳を尖らせる…



 「ハハッ…ハハハッ……襲うよ。決まってるじゃん。皆殺して、長の命を奪う。それが僕の任務だから。」


当たり前のように彼女は言うのだった…