フレイを見た瞬間、シュウは悔しそうに奥歯を噛み締める…
そして、再び咲き誇る花へと目を戻す…
哀れむような瞳を向けていたフレイは、突然ハッとしたように顔を上げた。
スカイブルーの空を見上げ、目を細める。
数秒顔を上げたままだったフレイは、顔を歪め舌打ちをすると、近くにいた女性を呼ぶ。
呼ばれた女性は、何だ?と素っ気ない態度を取りながら、フレイと話し出す。
突きつけられていた剣から解放され、上体を起こしたシュウは、首に手を添えながら、話している2人を見つめる。
話が終わったのか、フレイはシュウの元へと歩いて来ると、口を開く。
「研究所が襲われた。今研究所は混乱状態。
死者もいる。それも、少数じゃない。」
何を言っているんだと目で訴えるが、彼の表情は真剣で、嘘ではないと言っていた…
「ライナスが闇の者と接触している。そしてマリンは、彼を追い行方不明……どちらも怪我を負っている。」
それを聞いたシュウは目を見開くと、息を呑む…
仲間が襲われ、
ライナスが闇と接触…
マリンは行方不明…
様々な言葉が頭を巡り、混乱していく…
「俺は今から援護に向かう。戻ってくるまで休んで………」
「俺も行く……」
フレイの言葉を遮ったシュウの瞳は、強い意志を含んでいる…
だが…
「駄目だ。」
フレイはキッパリと彼を突き放す…
「何故…?」
「今のお前は足手まといだ。援護に向かった所で、何もできない。また怪我人を増やすだけ。」
「そんな…」
何か言おうと口を開いた時だった…
フレイはシュウを睨むと、低い声で言う…
「無力なんだよ、今のお前は。何もできない、何もできやしない、ただの子供同様、無力なんだよ。」
その言葉が、胸を刺す…
何もされていないのに、何もしていないのに、胸が苦しい…
どこからか何かがこみ上げて来て、知らぬ間に瞳には涙が滲む…
拳を握り、唇を噛み締めたシュウは、涙を溜めた瞳をフレイから放す…

