時が止まったかのように、静かなその空間…
耳が聞こえなくなってしまったのかとさえ、錯覚を覚える…
「……ジェイド………」
先程聞こえた声と同様の声が、この血の海の中から聞こえてくる…
その声にハッとしたフジは、現実に引き戻され、辺りを見回し声の主を探す…
仲間の血に染まる顔が、嫌でも目に映る…
苦しみ…
悲しみ…
恐怖に暮れる表情が…
その顔から目を反らしながら、割れた窓の下に目をやった。
「レナ、さん…?」
そこで見つけたのは、濃い茶色の髪をポニーテールにした、小さな少女…
彼女は、自らの身体を抱きしめるように膝を抱き、膝の間に顔を埋め、廊下の隅に縮こまる…
「……シエラ……リュジン…………フィヲ………キース………」
涙声で、苦しそうに、何者かの名を呼び続けるレナ…
そんな彼女に近づくフジは、ゆっくりと前にしゃがむと、そっと彼女の小さな肩に触れた…
「レナさん……?」
優しく名を呼ぶと、彼女はビクリと体を震わせ、顔を上げた…
そして、揺れる瞳を目の前の人物に向け、口を開く…
「……止めて…殺さないで………」
そう言った彼女の瞳から、一粒の涙が頬を伝う…
綺麗に流れたその雫は、キラキラと舞って落ちて行く…
そんな彼女の涙を見たフジは、小さな彼女を抱きしめる…
「レナさん……もう、大丈夫です……落ち着いて下さい………
…もう、怖くないですから……もう、誰も傷つきませんから………」
恐怖からか、小刻みに震えるレナ…
その震えを止めようと、フジは力強く抱きしめる…

