BLACKNESS DRAGON ~希望という名の光~


治療室と実験室の間にある、どこまでも続く長い廊下。

その中を歩む、短髪で色白の男性。

彼の整った顔は、驚きの表情一色だった…



目を見開いて、辺りを見回す…


その瞳に映ったのは、戦後のように荒れ、血に染まった廊下と、そこに倒れる沢山の仲間達…


そして、その仲間を救おうと救護活動に専念する、研究所の者達の姿だった…


彼らは自ら傷を負いながらも、懸命に命を救う…



共に助け合い、慰め合う彼らを目にしたレオンは、自らもその中に加わろうと、止めていた足を進めた。





廊下を進みながら、怪我人の様子を伺う。


大半は魔法の使える者によって治療を受け、ある程度の傷は回復していた。


だが、重傷・重体の者も数多く見える…


また、瓦礫の下敷きになった者達の救出活動も続いていた…






辺りを見回しながら、歩を進めていたレオンは、ある人物を目にすると、その足を止めた…




壁に背を預けた、長身の痩せた男性…



外傷はそんなには見られない…

何か鋭い物で斬られたような切り傷と、頬に見える火傷の跡…


その他に特に目につく怪我は見当たらない…



だが、彼は胸の辺りを押さえ、苦しそうに息をしていた…


その顔色は青白く、紫色の唇は微かに震えている…



レオンは眉間に皺を寄せ目を細めながら、ゆっくりと彼に歩み寄る…



 「ジン……」


近づいて来る人物に気づく様子のない男性に、静かに彼の名を呼ぶと、彼はレオンの方へと顔を向けた…



 「…レオ………ッ……ゲホッ………」


微かに笑みを浮かべ、彼の名を呼ぼうとした時だった…

ジンは口元を手で押さえると、大量の血を吐いたのだ…


そして、苦しそうに何度も咳をしながら、赤く染まった床へと崩れ落ちる…




 「ジン!」


それを目にしたレオンは、ジンの前に膝をつくと、心配そうに顔を覗き込む…



 「…大……丈夫………」



ジンは、唇についた血を拭いながらそう返事をするが、どう見ても大丈夫そうではない…


尚も苦しそうに息をし、青白く顔をしている…