目の端に映った、よく知る人物…
カナメは、信じられないと目を見開き、血溜まりの中を走って行く…
嘘だ…
嘘だ…
そんなの…
そんなの、信じられない…
信じたくない…
涙ぐみながら走る彼女は、心の中で、祈り続けた…
彼を、助けて…
生きていて…
と…
カナメは、倒れるある人物の元に走り寄ると、そっとその体を後ろから抱えた…
「ナツキ……?」
優しく名を呼ぶが、彼は目を開けない…
「ナツキ………ナツ…キ………」
体を揺らし、何度も名を呼ぶカナメ…
その彼女の声は、確かに震えていた…
涙が瞳に溜まり、今にも零れそうになった時…
「…っ………」
「ナツキ!」
ナツキは、彼女の呼びかけに答えるように目を開けた…
そんな彼を見て、彼女は彼を抱き締める…
すると…
「いっ……」
ナツキは顔を歪め、声を漏らした…
その声を聞き、カナメは体を離すと、彼の怪我を確認する…
「ごめん!……酷い怪我…銃弾が残ってるようね……でも、治療すれば………」
「駄目だ……」
右肩の怪我を確かめ、絶対に治してみせると言おうとしたが…
その言葉は、ナツキの言葉によって遮られた…
ナツキはカナメの顔を見る事なく、言葉を続ける…
「…仮にその傷が治ったとしても、もう右手は使えない……」
「どういう……」
眉を潜め、理由を聞こうとしたが、カナメはあるものを目にし、目を見開く…
それは、骨が見える程爛れた、彼の右手だった…

