レオン、フジと別れたカナメは、ゆっくりと歩を進めながら、左へと続く廊下を曲がる…
曲がると同時に銃を構えるが、その銃は力なく下ろされた…
大きく目を見開く彼女…
その顔色は、青ざめていた…
ガタガタと、体中が震える…
右手に握られていた銃が滑り落ち、床にできた液体の中に落ちて行った…
銃が落ちた時に飛び散った液体が、彼女の膝下に付着する…
彼女は、その液体を確かめるべくゆっくりと見下ろした…
冷たい赤い雫が、彼女の皮膚をゆっくりと流れ、再び元いた場所へ戻ろうと伝っていく…
そんな赤い雫に、床に広がるその液体…
その中に倒れる、数え切れない程の人々の姿…
一面が赤く染まっていて…
どこに目を向けても、同じ風景…
その空間から、逃れるのは、不可能…
胸に拳を添え、息を荒らげながら、彼女は後退る…
だが、一歩下がったその先も、床は血に染まり、彼女の足は、血溜まりの中…
荒れる息を押さえようと、目を瞑り、深く空気を吸い込むと、時間をかけゆっくりと吐く…
落ち着け…
私がしっかりしないでどうする…
しっかりしないと…
救わないと…
皆を…
救わないと…
荒い息を整え、目を開けた彼女は、目の前に広がった現実を受け止める…
そして、強ばっていた足を前へと進めた…
倒れる仲間達に頭を下げながら、彼女は生存者を探す…
時にしゃがみこみ、息を確かめ、脈を計る…
そんな彼女は、ふと足を止めた…
彼女の瞳に映ったのは、胸から血を流し、恐怖に怯えるように目を見開く女性の姿…
「イヅル……」
カナメは彼女の名を呟くと、そっと額に触れ、見開かれた瞳を閉じてやった…
体温を感じない、冷たくなった額に触れ、カナメは拳を握り締める…
酷い…
酷すぎる…
何故…
何故、罪のない者達をこんな目に…
何故尊い命を奪う…
私達は何もしていないのに…
何もしていないのに…
涙を流しそうになり、顔を上げる…
ふと、その瞳に、何かが映った…

