床に叩きつけた拳を見つめ、唇を噛み締めるカナメ…
体を震わせ、怒りを露わにしていた…
そんな中、突然、流れ続けていた悲鳴が途絶え、何も聞こえなくなる…
何事かと顔を上げると…
「通信回復!今すぐ扉を開けます!」
背後からのその声に、カナメだけでなく、レオンも、ミズハも、声の主であるフジを見つめる…
一気に注目を浴びたフジだが、気にする事なく、キーボードをうち続けた…
すると、数分もしない内に扉は開き、部屋の中に風を導く…
外から侵入する冷たい空気は、カナメの赤みがかったセミロングの髪を揺らし、部屋中に満ちて行った…
その風を頬で感じたレオンは、机の端にあった銃を手に立ち上がると、カナメの側に歩いて行く…
扉の前にたどり着くと、座り込んでいる彼女の手をとり立たせると、鋭く部屋の外を睨みつけた…
機器を扱っていたフジも彼らの横に並び、3人揃って部屋の外へ歩いて行く…
そんな彼らを見て、ミズハも後を追おうと立ち上がるが…
「ミズハはここにいてくれ。皆と通信をとって、現状の把握をして欲しい。」
「……わかりましたぁ。」
少し戸惑った様子を見せたミズハだったが、笑顔を見せると、すぐさま皆と通信をとり始めた。
笑顔を見せる彼女だが、本当はそんな笑顔も作りたくなかった…
恐いんだ…
1人になるのが…
皆が目の前から消えるのが…
でも、甘えられない…
甘えられないんだ…
彼らの知らない所で、彼女は戦っていた…
自分の、恐怖という文字と…
部屋の外へと出た3人は、辺りの様子を警戒するように伺う…
物静かで、どこか怪しげな空気が漂うその廊下…
冷たい空気が流れ、陽の光が差し込んでいるのに、微かに闇が占領する…
辺りを見回した3人は、互いに目を見つめ合い頷くと、それぞれ別れて歩き出す…
共に辺りを警戒し、左右くまなく見渡しながら…
速まる心臓に、震える体…
逃げてしまいそうになる心…
そんな心を落ち着かせようと、大きく深呼吸をしながら、一歩一歩歩を進めて行った…

