研究所の中、様々な機器の並ぶ部屋に閉じ込めらた4人。
外の仲間と連絡をとる事もできずにいた…
緊迫した空気の漂うその部屋の中には、何者かに占拠された通信から流れる、人々の悲鳴が響き渡る…
終始流れ続けるその悲鳴…
泣き叫ぶ声…
ガラスが割れる音…
轟く爆発音…
それら全てが、見えてもいないのに、頭の中に血だらけの惨劇を形作る…
これは罠だ…
混乱させようとしているだけだ…
そう言い聞かせても、何度も頭の中から消し去ろうと、再び描かれるその光景…
その叫び声を聞いている自分が、叫びたくなる程に、心が乱れていた…
「無事で、いてくれ……」
1人離れた位置に座るレオンは、両手を握り、その拳を額に当てながら、祈るように呟く…
フジは、巨大な画面を睨みながら、未だ途絶えた通信を回復しようと格闘していた…
自分のデスクに腰掛けるミズハは、震えながら耳を押さえ、目を瞑ると、現実から逃避しようと歌を唱う…
耐えかねたカナメは、顔を伏せたままいきなり立ち上がると、椅子を引きずりながら扉まで歩いて行く…
そして扉の前にたどり着くと、高々と持ち上げる…
「ああ"ぁ"ぁ"ぁ"ーー!」
持ち上げた椅子を、力一杯ガラスの扉にぶつける…
が…
「っ……」
その椅子は跳ね返り、遠くへと飛ばされてしまう…
椅子のぶつかったガラスは、衝撃を吸収するように小刻みに振動し…
部屋の中を、割れるような鋭い音はなく、何かがぶつかったような鈍い音が響くのだった…
衝撃でバランスを崩した彼女は、23歩程後退すると、ペタンと座り込んだ…
顔を伏せ、何かを耐えるように唇を噛むと、握り締めた拳を振るわせる…
「クソーー!」
悔しそうに、冷たい床に拳をぶつけた…
拳を叩きつけたまま、肩を振るわせる彼女の瞳から、輝く物が見えたのは、気のせいか…
彼女の様子を見た3人は、それぞれ拳を握り締め、自らの無力さを知るのだった…

