四方に伸びる鋭き棘…
その刃先は、彼女の血で身を染めながら、彼女の心臓へと迫り行く…
ものの1秒もしないうちに伸び行くその棘に、交わすことも、攻撃する事もできないマリンは、拳の痛みと無力さに、微かに瞳に涙を溜めながら歯を食いしばる…
もう、全てに諦めかけていた…
これをもし交わせたとしても、更に別の攻撃がくるだろう…
その攻撃は、次こそ確実に息の根を止めにくる…
闇の手の内に入れば、自分はこんなにも無力なのか…
いつもプラス思考で、明るい彼女の性格からは考えられないような、その考え…
諦めるなど、もっての他…
そんな彼女の思考も、この恐怖の波が漂う空間の中では、考える事を忘れてしまう程に、頭の中をかき乱されていた…
拳から流れる、
生々しい赤い液体が…
そこから伝わる激痛が…
逃避しようとしていた思考を、現実へと引き戻す…
目を瞑り、次にくる痛みへと備える…
が…
「……?…」
その痛みは、伝わってこない…
心臓を捕らえようとしていた棘の先は、彼女の胸の辺りに触れ、布地の服を通過…
そしてそのまま皮膚を貫き、早まる心臓を仕留める…
はずだった…
なのに、その棘先は、服を通過し、皮膚に触れた所で動きを止めていた…
そして…
ハラハラと、まるで粉雪のように、粒子のガラス片となり、血に染まる床へと舞い降りる…

